日本の食品を中国の食卓へ。北京市で9月22日に開催された「日本企業食品展示商談会」には、計27社が出展。試食やマグロの解体ショーなども行われ、会場は熱気に包まれた。多くの来場者が日本の食品に舌鼓を打ち、「一番庶民に近いところにある食」を通じた中日友好イベントとなった。

■計27社が出展、約700人が来場

北京市のフォーシーズンズホテルで9月22日、中日国交正常化50周年記念イベント「第8回日本企業食品展示商談会」が開催された。このイベントは、日本貿易振興機構(JETRO)、北京日企食品協会(北京フード会)が主催し、在中国日本国大使館が後援。日系食品関連企業計27社が出展し、商品の紹介や調理方法の説明、日本の食品を使ったメニュー紹介、試食などのほか、マグロの解体ショーなども行われた。来場者は約700人に及び、会場は大いに賑わった。

会場には在中国日本国大使館の垂秀夫大使も足を運んだ。イベントの盛況を受け、「食文化は日本の象徴。これをこんなにたくさんの中国の方が喜んでくれている。日中関係を後押しする大きな力をもらったと感じている」と語った。

■日系食品関連企業の共同イベント

「日本企業食品展示商談会」は、北京の日系食品関連企業の団体である北京フード会が、日本の食品を中国の消費者に広く紹介することを目的に2019年から開催。一企業の単独イベントではなく、数社の共同イベントとしてスタートし、今回が8回目となる。

北京フード会の会長を務める食研食品(中国)有限公司の木村誠営業総監は、日本企業食品展示商談会について、「当初は6社で始まった。石家荘、保定、張家口、鄭州、西安、天津、呼和浩特(フフホト)で開催し、そして今回は北京市での開催となった。今回はこれまで最多の27社が来てくれて、どんどん規模が大きくなっている。盛大になってうれしく思う」と感慨を込めて語る。

このイベントは、各企業がそれぞれの商品を単独で紹介するだけでなく、数社が協力してメニューを紹介し、試食を提供するなど、企業どうしが協力して出展していることが大きな特徴の一つだ。例えば、ラーメンのコーナーでは、麺、タレ、スープ、チャーシュー、漬物、海苔、食器などの企業が協力し、海苔巻きでは米、酢、具材、海苔などの企業が連携した。

北京フード会は、2011年の東日本大震災後、食品商社やメーカー、物流関係者が発起し、設立された。以来、中国の発展と共に食の多様性が進み、それに関係する食品関係者も増え、会の規模も拡大。在中国日本大使館の協力も得て、現在では北京最大の食品関連の組織となっている。日本企業の関わる安全で質の高い、おいしい食品を中国全土に届け、中国の食シーンをより豊かにすることを目指して活動している。

■中国は日本の最大の食品輸出先に

2021年、日本から中国大陸部への食品輸出額は2224億円となり、香港特別行政区を抜いて、世界の国・地域の中で最多となった。在中国日本国大使館経済部の三上善之参事官は、「そういう意味では、日本産食品が受け入れられているという状況にある」とする。JETRO北京代表処対外業務部の唐澤和之副部長によると、品目として伸びているのはアルコール製品で、金額的にはウィスキーの伸びが目立つが、やはり日本酒が多いという。

日本酒の中国での広がり方には、日本や日本企業のPR効果だけでなく、中国の消費者が自ら日本の食品の普及に貢献するという新しい流れも見えてきている。唐澤副部長は、「中国の方が日本からも自分で情報を得るなどして、SNSを活用してその情報をシェアし、口コミで広めている。日本人よりも詳しい方も増え、北京にも日本酒専門バーなどが増えている。嗜好品として楽しむだけでなく、『文化と一緒に日本酒を知る』というように、教養という形で周りの人にもシェアしたいという人もいる。日本酒に関するイベントも多く、『今日は日本酒とチョコレートを一緒に楽しんでみよう』など、テーマをいろいろ作って会を催している。個人レベルや民間レベルでも熱が高まっていると感じる」とする。

さらに、健康意識の高まりを受け、日本産の食品、例えば菓子類では、砂糖抑え目のビスケットや無添加のものなど、品質にこだわりをもった消費者が増え、そうした消費者の声を受けた輸入業者からの問い合わせが増えている状況だという。実際、「3月に行われた別のイベントの際も、子供に安心して食べさせられる無糖や無添加のビスケットを要望する声が特に多かった」と唐澤副部長は言う。

■草の根の中日友好イベント

今回のイベントは、中日国交正常化50周年記念イベントとして開催された。食品の展示商談会が果たす役割について三上参事官は、「食を通じた交流というのは、文化交流の中でもとても象徴的な価値を持っていると思う。いろいろな食品を提供する企業が集まったところで、中国の方たちに本物の日本食に触れていただく機会を提供できるということは、非常に意義が大きい。それが日中の交流が深まっていく契機になればと思っている」と語った。

北京フード会の木村会長も、「食は一番庶民に近いところにあり、こうしたイベントは草の根運動と言えると思う。まずは、中国の皆さんにこんな商品があるということを知ってもらえたらうれしい」とする。イベントに出展した井村屋(北京)食品有限公司・時山晃一営業部長も、「日本の食べ物を中国の方に知ってもらって、『おいしくてうれしい』という状況を共有できる機会がもっと増えればいいと思う」とした。

イベントを訪れ、カレーを試食していた北京市の方さんは、東京医科歯科大学の博士課程に留学経験がある医師。新型コロナが流行する以前は、学会などで頻繁に日本を訪れており、日本でよくカレーライスを食べていたという。方さんは、「90年代初めの頃は、中国国内で作っているカレーのルーは売っていなかった。あっても輸入品だけで、なかなか買えなかった」と振り返る。90年代には、中国ではカレーを食べる人が多くなかったが、今ではかなり普及し、フードデリバリーサービスでもおなじみの料理になった。日本の食品や料理の中国での普及を示すエピソードだ。

方さんは今回のイベントについて、「これも中日交流イベントの一つ。イベントで中国の人に今年は中日国交正常化50周年だということを知ってもらえる。文化交流の一環だと思う。食品もその一つ。とてもいいことだと思う」と語った。(文/勝又あや子)

「人民網日本語版」2022年9月23日