
一、海淀区の基本状況
海淀区は北京市内の北西部に位置し、都心部に属し、中国初の国家レベルの自主創新モデル区である「中関村国家自主創新モデル区」の中核エリアであるとともに、首都における全国科学技術革新センター建設計画の中核エリアになっている。同区は面積が430.77平方キロメートルで、22の街道(町)と7つの鎮(行政区)を管轄し、2019年末までの常住人口が324万人となっている。同区は歴史が長く豊かな文化資源を持ち、首都の西山―永定河文化帯と大運河文化帯の交差地域に位置し、700箇所あまりの名所旧跡が点在し、特にその中で「三山五園」が最も代表的な歴史文化観光スポットとして挙げられる。国家図書館など300箇所あまりの各種の図書館、博物館、100箇所あまりの大中型文芸公演劇場、及び中央テレビ局(CCTV)など数多くの国内一流の文化・文芸事業体も同区域内に拠点を置いている。翠湖都市湿地、鳳凰嶺自然風景区のほかに京密導水路と「南水北調」(中国南部から北部への送水)プロジェクト水量調節池などの重要な水源地を保有し、都市の緑化被覆率が52.36%に達し、区内において「山、水、畑、林、湖」の生態系が完備された、優美で住みやすい環境にある。
二、2019年海淀区の経済・社会の発展状況
2019年は中華人民共和国(新中国)成立70周年であり、新時代において海淀区の改革開放が再び旅立ち、改めて始動する最初の一年になった。同区は「習近平氏の新時代における中国の特色ある社会主義思想」を導きとし、区委員会と区政府の強力な指導のもとで、中関村科学城(中関村サイエンスパーク)を中心に、全面的に「両新両高」(文化と科学技術の融合と成長による新原動力・新型都市形態の構築を指す「両新」及び、高品質な発展の促進・高品質な都市づくりを指す「両高」)という区域発展戦略をさらに深め、執行の確実化を推し進めていく。安定を保ちつつ前進を求めて質を向上させる勢いが次第に強化され、区域のイノベーションと飛躍的かつ質の高い発展において着実な一歩を踏み出した。年間地区総生産高が7926億元で、前年比7%増え、全市の22.4%を占め、四半期別では16期連続で7%以上の成長率を見せ、経済規模及び全市の経済に対する貢献が引き続き「二つ共に第一」を確保している。区レベルの一般公共予算の歳入は446.5億元で、住民1人あたり可処分所得の成長率が8.4%で84733元に達し、経済成長の速度をも上回っている。
第一に、経済の質の高い発展による新たな成果の獲得。産業の成長において新しい内的要素が現れ、情報サービス業、技術サービス業、金融業、教育業及び工業の五大産業の生産高が地域総生産高の約77%を占め、経済成長への貢献率が9割を超えている。投資と消費が経済にとってより強力な支援活動となり、全社会固定資産投資の実際金額が896.4億元に達し、その中で建築及び設備据付工事関係の投資が318億元となっている。市場総消費額が7075.4億元で、前年比10.5%増え、消費市場の伸び代は良好である。科学技術イノベーション向けの供給が新たな大台に上り、同区での研究開発投資額は全国に比べ4.6倍まで増加した。また、1万人あたり専利(特許)・発明の保有量が全国平均水準の30倍となっている。新たな経済成長において融合し協調する勢いを見せ、人工知能によって実体経済への原動力を提供し、全国の6割を占める270社の国際的知名度の人工知能企業が集結している。人工知能の場面ごとの応用と産業間の融合など複数の分野で全国をリードしている。
第二に、イノベーション要素の持続的な上昇。海淀区には中国科学院を始めとする99箇所の科学研究院所、31箇所の国家工程研究センター、107箇所の国家重点実験室が集結し、科学院と工学院の院士の人数が計605人に達して、全国の36%を占めている。「千人計画」「海聚工程」「高聚工程」などの人材評価プロジェクトに入選した人数も全市第1位を誇っている。各業界におけるトップクラスの企業が引き続き成長し、区内にある国家レベルのハイテク企業の数が1.1万社を突破し、ハイテク企業の総営業高が10%以上の伸び代で2兆3億元に達する見込みとなっている。市場主体がますます活躍し、各産業におけるトップ企業、ユニコーン企業が絶えず現れることにより、中小零細企業を「塔の基礎」、成長中企業を「塔の主体」、トップ企業を「塔の頂き」とする安定したピラミッド型市場主体の構造が形成されてきた。寒武紀(Cambricon)、字節跳動(バイトダンス)などシリコンバレーに次ぐ40社のユニコーン企業がここに集まり、「高精尖」分野を主導し、複数の分野でそれぞれの成果を収めた配置の実態が成り立っている。
第三に、市場環境の絶えざる最適化。「高精尖」産業の空間資源を構築し、「1+3」政策の体系を生かして「創新発展16カ条」を実施することを基盤に、「人工知能15カ条」と「知能網聯自動車(インテリジェント・コネクテッドカー)15カ条」の2つの産業政策を打ち出す。全市に率先して、登録企業に対して無料の住所を提供するインキュベーター関連政策が試行され、「クラスター登録」プラットフォームも既に中関村海淀創業サービスセンターと中関村創業大街で運営が試行されている。政府による投資プロジェクトに対する審査・批准と実施の流れをさらに円滑化し、プロジェクトの建設コストをより一層低減させていく。新技術の利用によって政務サービスをアップグレードし、ほかに先駆けて人工知能やブロックチェーン技術を利用し、不動産登録における「一窓受理、集成服務、高効弁理」(窓口の一元化、サービスの一括化、手続きの効率化)を実現する海淀モデルを強化している。「サービスパッケージ」制度を一段と着実に執行し、重点企業向けのサービスを強化し、類別・級別のサービス提供、ユニバーサルサービス及び重点サービスが相結びつく企業向けの「ビッグサービス」事業体系を構築する。
第四に、公共サービスレベルの日を追うごとの向上。学校の配置を最適化し、集団化建学、協定校間の直接進学、教育連盟などの建学モデルを着実に推進していく。新たに小中学校の入学可能人数を3000人まで、就学前教育の入学可能人数を8200人まで増やし、「入園難と入学難」の問題を緩和するよう尽力する。全国健康促進区の構築を全面的に強化し、病院と医療消耗品の連動に関する総合的な改革をスムーズに推し進め、6621項目の医療サービスの価格を規定・調整した。653のホームドクターチームを作り上げ、契約を結んだ医師は計123万8000万人に達している。「国家公共文化服務体系モデル区」をスムーズに建設し、一年間に「海の春・新春文化シーズン」(海之春新春文化季)、全民読書キャンペーン、中関村シリーズ公演シーズンなど、ブランド化された一連の文化イベントを1万回あまり開催し、参加した住民が延べ500万人あまりに達した。全市において最初に台所ゴミの有料収集業務を始め、13箇所の大型・低価値の再生可能資源に対する回収・中継ステーション、326箇所の商品類再生可能資源回収スポットを配置し、再生可能資源の回収システムはますます完備している。積極的に国家食品安全モデル区の建設を推進し、重要な食品の安全モニタリング抜き打ち検査の合格率が99.4%に、薬品の同検査の合格率が100%に達している。刑事事件の発生数が比較的低いレベルに抑えられ、住民の安全感評価アンケートの結果が四半期別では24期連続で、市内6区で第1位に輝いている。雇用と起業に関する事務に着実に取り組み、1万5000人の都市部・農村部の登録失業人員の再就職を手助けしている。