一、背景及び根拠

中国は科学技術イノベーションを非常に重視し、科学技術イノベーションにおけるグローバルな協力を促進することに力を入れている。国家レベルでは、「中華人民共和国外商投資法実施条例」と「対外貿易及び外資の安定化に向けた取り組みの更なる完遂に関する意見」などの文書では、いずれも外商投資を奨励・促進し、外国人投資家の合法的権益を保護し、外資系研究開発センターが優遇政策を受けるための要件を緩和し、外国人投資家が中国における投資と研究開発センターの設置を奨励する旨が明確に指摘されている。北京市では、外資系研究開発センターの設立・発展に関する具体的な文書はいまだなく、外資系研究開発センターの認定の線引きについても比較的曖昧である。そのため、北京市は、北京への外資系研究開発センターの誘致及び設立・発展の促進を図り、北京での外国人投資家の発展に寄与し、いっそう開放的・包括的で、互恵的・共有的な国際科学技術協力を推進し、北京国際科学技術イノベーションセンターの建設を加速させるための特別政策を制定・発表した。

二、支援対象

同規定の支援対象は、研究開発イノベーションセンターと開放型革新プラットフォームの2種類の外資系研究開発センターとされている。

外資系研究開発センターとは、海外に主な事業拠点を置く外国人投資家が全部又は一部を投資し、中国の法律に従って中国国内に設立された機関をいい、その事業範囲には、自然科学及びその関連科学技術分野の研究開発並びに実験発展(研究開発活動に資する中間試験を含む)を含む。

研究開発イノベーションセンターとは、独立した研究開発チームを持ち、地域又はグローバルな研究開発プロジェクトの主要なステップとプロセスの大部分を請け負う研究開発センターをいう。

開放型革新プラットフォームとは、施設・設備や、研究開発所及び専門的な指導の提供を通じて、中小企業やイノベーションチームとのプロジェクト連携を促進し、協同イノベーションを実現する研究開発センターをいう。

三、主な支援内容

(一)人材サービス

外資系研究開発センターに雇用された適格な外国人人材とその配偶者、18歳未満の未婚の子女を対象に中国永久在留手続きに関するサポートを提供する。

外資系研究開発センターに採用された外国人ハイエンド人材に対するビザ・就労許可手続きに関するサポートを提供する。

外国人人材を対象とする感染症のサーベイランス・健診サービスを最適化する。

外資系研究開発センターに採用された外国人人材に対する入国、健診、受診などの円滑化サポートを提供する。

外資系研究開発センターに雇用された海外高度留学人材が、輸入品の通関手続きを迅速に行えるよう支援し、科学研究及び教育目的の免税品及び私用目的の免税品リストに掲載されている輸入品に対する免税通関を許可する。

外資系研究開発センターに誘致された中国人ハイレベル人材に対する円滑化サービスを提供する。

外資系研究開発センターの中国人従業員のAPECビジネストラベルカードの申請をサポートし、香港・マカオ・台湾地区又は海外へ出張する必要がある者に対し、関連部門はスムーズに対応する。

(二)科学研究インセンティブ

要件を満たす外資系研究開発センターによる技術移転を支援し、関連法規に基づき技術移転にかかる所得税の優遇措置を享受できるようにする。

要件を満たす外資系研究開発センターがハイテク企業の認定申請を行うこと奨励する。

免税の条件を満たす外資系研究開発センターに対する科学研究、科学技術開発、教育用品の調達時の輸入関税、輸入関連増値税及び消費税を免除する。

税金還付の条件を満たす外資系研究開発センターに対する中国産機器の調達時の増値税を全額還付する。

外資系研究開発センターに対する研究開発インセンティブ制度の導入を検討する。

外資系研究開発センターが北京市の重点分野の科学技術計画プロジェクトに参加し、北京市科学技術賞へのノミネート申請を支援する。

科学技術成果の実用化プロジェクトを実施する外資系研究開発センターが、中国国内の研究開発機関と同様の待遇を享受することを保証する。

外資系研究開発センターが北京市の科学技術イノベーションのための各種公共サービスプラットフォームを十分に活用し、研究開発実験に関連するサービスを享受できるよう支援する。

外資系研究開発センターがポスドク科学研究ワークステーションを設置し、北京市の各種科学技術イノベーションプラットフォームの認定申請を行い、北京市における新たなシーンの構築に参加することを奨励する。

(三)知的財産権

外資系研究開発センターが取得した国内外の発明特許は、国内資本機関と同様の資金援助政策を享受することができる。

外資系研究開発センターに知的財産サービスを提供する外国特許代理機関の常駐代表機関の設立に関する試行事業を実施する。

海外の有名な仲裁機関が中国(北京)自由貿易試験区に業務機関を設立することを支援する。

外資系研究開発センターが北京知的財産権取引センターと北京市融資サービスセンターを利用して、知的財産権担保融資のためのワンストップ総合サービスを受けられるよう支援する。

(四)ビジネス環境

要件を満たす外資系研究開発センターの外国人人材が、給与所得の外貨転・支払及び同伴子女の学費の元転を促進するため、国境を越えた金融サービスを提供する。

外資系研究開発センターに対し、銀行が国境を越えた金融関連サービスの提供を支援する。

外資系研究開発センターが関連規定に基づき、通関円滑化措置を受けられるよう支援する。

中関村生物医学検査検疫試験区の政策を活用し、外資系研究開発センターによる特殊物品の入国の便宜を図る。

外資系研究開発センターに関する政務サービス事項を市、区の政務サービスセンターに一元的に管理させ、「一窓受理(1つの窓口で受理する)」サービスモデルを実施する。

開放型革新プラットフォームの研究開発所を、関連規定に基づき、クラスター登録住所として認めることを奨励し、入居企業に対して登記登録サービスを提供する。

政策発表と解説のための情報プラットフォームを構築する。北京市政府の国際版ポータルサイトに依拠し、様々な情報サービスを提供する。

(五)属地保障

各区政府(北京経済技術開発区管理委員会を含む)は、法に基づいて、外資系研究開発センターの合理的な土地使用などのニーズを保障する。

外資系研究開発センターの被雇用者で、北京市の財産権共有住宅の申請要件を満たす人材を、各区の財産権共有住宅購入申請の重点人材の範囲に組み入れる。

外資系研究開発センターが、国際人材コミュニティマンション及び関連付帯施設を利用することを奨励する。

小中学校が国及び北京市の関連規定に基づいて外資系研究開発センターの被雇用者の子供の入学を保証するよう支援する。

外資系研究開発センターは、関連規定に基づき、従業員の職業訓練のための補助金を受けることができる。

四、注目点と特徴

(一)革新的な管理モデルの模索

第一に、政策のアクセスルートを統合し、一元管理する部門を明確化し、北京市科学技術委員会、中関村管理委員会及び北京市商務局は関連部門と協力して認定業務を行い、政策がもたらす利便性を高め、外資系研究開発センターに効率的なサービスを提供する。

第二に、政務サービス関連事項を市、区の政務サービスセンターに一元的に管理させ、「一窓受理(1つの窓口で受理する)」サービスモデルを実施し、事務プロセスを簡素化し、外資系研究開発センターの事務処理に要する手続き上の負担を確実に軽減させる。

(二)開放型革新システムの構築

第一に、外資系研究開発センターに対する研究開発インセンティブ制度を実施し、北京における外資系研究開発センターの設立・発展を支援し、研究開発投資を拡大し、都市のイノベーション活力を引き出す。

第二に、外資系研究開発センターが北京市の重点分野の科学技術プロジェクトに参加し、北京市科学技術賞へのノミネート申請を行い、科学技術成果の実用化プロジェクトの実施において、中国国内資本機関と同様の待遇を受けられるよう支援し、外資系研究開発センターが北京市の各種科学技術イノベーションプラットフォームの認定申請を行い、北京市における新たなシーンの構築に参加することを奨励し、外資系研究開発センターが北京市のイノベーションシステムに溶け込むための的確なサービスを行う。

(三)人材に対するサービス保証の最適化

第一に、証明書手続き、出入国、健診・受診、輸入品の迅速な通関、外貨決済・外貨購入、住宅保障などの面で便宜を図り、外資系研究開発センターの雇用人材の北京滞在と成長に寄与すること。

第二に、外資系研究開発センターがポスドク科学研究ワークステーションを設置し、ポスドクを採用して研究業務を行うことを支援し、外資系研究開発センターがハイレベル人材を誘致することを支援すること。