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(写真提供:VCG)

【新華社北京6月10日】中国でこのほど、太宰治の小説「人間失格」を基に北京市で上演されるミュージカルのチケット販売が始まり、演劇ファンや原作読者の注目を集めた。同作は2021年に上海で初めて上演され、計12公演に約1万5千人が来場。22年には北京での初演が満席となった。

1920年代の「不如帰」から2000年以降の「容疑者Xの献身」「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」(映画「空海-KU-KAI-美しき王妃の謎」の原作)などに至るまで、中国で映画化・テレビドラマ化される日本の文学作品が増えた。

東野圭吾氏原作の舞台劇「白夜行」は初演の4カ月前に全公演のチケットが売り切れ、「回廊亭殺人事件」は発売開始から5日間で千枚が売れた。「回廊亭殺人事件」を制作したエンタメ企業、北京反掌娯楽文化伝媒の創始者、姜越(きょう・えつ)氏は、原作者が中国で注目されており、市場で一定の優位性を持っていることが宣伝面で有利に働いたと振り返った。

原作の魅力に加え、ローカライズが成功したことも中国の観客や視聴者に受け入れられる理由の一つとなっている。

外国作品の舞台を中国に変更する場合、物語の主構造を壊すことなく両国間の文化や社会、時代の違いで生じる壁を低くし、理解しやすくする必要がある。この点について映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」の中国版リメイク「解憂雑貨店」を監督した韓傑(かん・けつ)氏は、日本文化は中国の儒家文化の影響を受けているため、日本作品のリメイクの際には無理をせず、中国文化の根を探す必要があるほか、両国間で対応するポイントを見つけ出すことも必要だと指摘。同作品の原作は日本が経済安定成長期にあった1970年代を物語の起点としているため、中国版では80~90年代の改革開放後の急成長期とし、時代背景を押さえることで観客が入り込めるようにしたと語った。

中国版に携わる多くの制作チームは日本人スタッフを招き、オリジナルの持ち味を最大限残すよう努めている。「空海-KU-KAI-」では染谷将太、阿部寛が重要な役を演じ、舞台劇「白夜行」は千住明氏が音楽総監督を務めた。ミュージカル「人間失格」では長谷川寧氏が演出と振り付けを担当している。

中日間の文化交流が盛んになるにつれ、ますます多くの日本文学作品が翻訳または改編によって中国に上陸している。多彩な文化コンテンツは中国の観衆が日本文化を知るための窓口であり、両国民の相互理解を促す懸け橋にもなる。(記者/彭純、李卓璠)