太師屯鎮東田各荘村の「九曲黄河陣灯俗」は、元宵節(旧暦一月十五日)に行われる伝統的民俗行事です。いわゆる提灯祭りで、九曲黄河陣灯会、灯場子とも呼ばれます(古代の戦争時の陣形にならって提灯やろうそくを並べて通路を区切り、迷路のようにした陣の中を人々が巡ります)。明の洪武四年(1371年)、山西からの移民が灯場子を東田各荘村に伝え、現在までに600年以上の歴史を重ねてきました。
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九曲黄河陣の陣形は、周易の九宮八卦の方位に基づいており、富貴不断頭(富貴が途絶えないことの意)と呼ばれる中国の伝統的な文様パターンを模して通路が何度も折れ曲がるようにできています。陣内には乾、坎、艮、震、巽、離、坤、兌の八宮と中宮の合わせて九宮があり、これは中華九州を象徴しています。入口から入り、無事に陣内を通って出口から出てくれば、一年を順調、平安に過ごすことができるとされます。
九曲黄河陣灯俗の顕著な特徴は、灯陣、花会(芸能鑑賞会)、戯曲(歌劇、京劇)が三位一体を為し、それらが相互に照らし合って眩しいほどに光り輝き、独特の風格、特色を形成したことです。村が九曲黄河陣灯会とともに生み出した花会である徳縁善会の名はよく知られています。また、灯会のもう一つの重要な構成要素であるのが、アマチュア劇団の河北梆子(ほうし)劇団です。清の光緒年間(1875年~1908年)に創始され、100年以上にわたって衰えることなく演じ続けてきました。夜になると、陣に飾られた華灯(華やかに飾られた提灯)に火が入り、赤い灯火が見渡す限りに広がります。爆竹が鳴らされた後、陣に飾られた竹製の提灯が一斉に灯されますが、十数種類の芸能が披露されます。五つの巨大な幟を持った一団を先頭に、獅子舞、太鼓、高蹺(高下駄、竹馬等を履いて行う演技)、十不閑(曲芸の一種)、鼓笛、音楽等の芸能チームが順番に陣に入り、練り歩きながら演技します。おおよそ二時間で、まっすぐ伸ばせば1,500メートルにもなる灯陣内の通路を踏破して陣から出てきます。陣内に立てられた旗や幟がゆったりとはためき、銅鑼や太鼓の音が天高く鳴り響くと、陣外の人々は波のように押し寄せ、辺りは歓声で満たされます。芸能の披露が終わると、すぐさま京劇が開演し、真夜中までずっと続きます。たくさんの観衆は、楽しみや喜びの中にどっぷりと浸かって一日を過ごすのです。
九曲黄河陣灯俗は東田各荘村を挙げて行う盛大な一大行事ですが、民間の手工芸と演芸とが一体となっており、独特の鑑賞上の価値を備えます。民衆の知恵を集めて催される「九曲黄河陣」は、現地村民が元宵節期間に行う重要な文化行事ですが、人々に楽しみをもたらすと同時に中華の伝統文化も継承してきたという、重要な歴史的価値を持ちます。さらに、九曲黄河陣灯会は、村の中の十数種類の芸能及び河北梆子(梆子と呼ばれる拍子木を叩きながら歌い語る地方劇の一種)が演技を披露する舞台として、ほかの芸術様式の発展を励起し、地方の文化事業を盛り上げる役割も担ってきました。
2008年6月、国務院の批准を受け、第二陣の国家級無形文化遺産項目となりました。
(情報提供:北京市密雲区文化・観光局)