白雲観は由緒のある名刹であり、遥かな唐代の天長観に遡ると言われている。この地が正式に全真教の道観として使われたのは、元太祖二十二年(1227)、チンギスハンが「全真七子」の一人である丘処機真人(真人は道を悟った人という意味)に「長春宮」と称されていたこの地を与えた時からのことであると考えられる。しかし、元の末期にこの地も焼き払わされてしまい、明の永楽年間に再建され、明の正統八年(1443)には「白雲観」との号が賜られた。現在まで残されている建築物の大半は、清の時代に道士・王常月の手によって再建されたものである。
広大な敷地内には、山門・霊官殿・玉皇殿・老律堂・邱祖殿・三清閣・四御殿・八仙殿・呂祖殿など、数が夥しい建築物がある。
白雲観にいまでも多くの道士が住んでおり、中国道教協会の総本拠が置かれているところでもあり、宗教的な機能を果たしている数少ない道観の一つである。現在でも、廟会(縁日に開かれるイベント)が開催されている。
白雲観の廟会は、毎年旧暦の一月一日から十九日までである。その特徴的なところは、道教儀礼と密接な関係を持っていることであろう。例えば、旧暦の一月八日は星辰の神々を祭り、九日は玉皇大帝の誕生日を祝い、十三日から十七日までは灯節を祝うのである。また、十八日は「会神仙」と呼ばれ、仙人が下界に降りて来る日とされている。